コーティング技能検定 ― 級の違いと、実技で落ちるところ
コーティング技能検定を調べると、日程と申込方法は出てきます。ところが受ける側がいちばん知りたいこと ――実技で何を見られ、どこで点を落とすのか―― はあまり書かれていません。
このページは、検定の運営に試験監督官として携わってきた側から書いています。受験を考えているプロの方、これから3級・2級を取ろうとしている方に向けた内容です。
なお検定を実施しているのは一般社団法人 日本コーティング協会で、当店ではありません。日程・受験料・お申し込みは、必ず協会の公式サイトでご確認ください。
コーティング技能検定とは何か
コーティング技能検定は、一般社団法人 日本コーティング協会(JCA)が実施する民間の技能検定です。国家資格ではありません。協会は2012年に設立された非営利の団体で、検定を実施する理由を公式サイトでこう述べています。
「知識も経験も無い者と長年培った技術や経験がある者とでは、仕上がりに違いが出てくるのは当然。それなのに同額の請求をしているのが現状です。有資格者と無資格者の違いを明確にし、一般ユーザーにその違いを浸透させ、差別化していくことが、正しいコーティングを実施する業者集団の攻めの形ではないかと思います。」
この業界には、施工そのものを規制する法定の免許がありません。だからこそ、腕を示す物差しは業界が自分で用意するしかない――というのが検定の出発点です。日本初の技能検定1級試験が開催されたのは2015年6月でした。
3級・2級・1級は、見られているものが違います
同じ「検定」でも、級によって試験の形がまるで違います。ここを取り違えたまま準備すると、練習の方向がずれます。
3級 学科です。コーティングと下地処理の基礎知識を問われます。持ち物は受験票・証明写真・本人確認書類・筆記用具・腕時計など。
2級 学科に実技が加わります。磨き道具一式(ポリッシャー・バフ・コンパウンド・延長コード・ライト・ウエス・バケツ)を自分で持ち込みます。普段使っている道具で構いません。
1級 受験資格があります。2級取得者で、実務経験3年以上(在籍証明書が必要)。いきなりは受けられません。
出典:日本コーティング協会「試験当日について」/同「第5回 1級 試験開催日程」(2026年9月1日確認)
つまり、1級を目指すなら逆算は「3級 → 2級 → 実務3年 → 1級」です。2級の実技をどう抜けるかが、実質的な最初の関門になります。
1級は「1台の半分を、4時間で、ひとりで」
2026年10月開催の第5回から、1級試験は試験車両1台の半分をお一人で施工・仕上げる方式になりました。制限時間は前後のヒアリングとフィードバックを含めて合計4時間、実技はそのうち3時間です。対象車は当日まで公開されません。
状態チェック・各シート記入(20分)→ 施工前ヒアリング(10分)→ 実技3時間 → 施工後ヒアリング(15分)→ 試験官からのフィードバック(15分)
合否は、協会が定めた判定項目を5段階で評価し、約80%以上の得点で合格とされています。
出典:日本コーティング協会「第5回 1級 試験開催日程」(2026年9月1日確認)。最新の内容は必ず協会公式でご確認ください。
ここで気づいていただきたいのは、時間配分です。3時間のうち、磨きだけに使える時間はごく一部です。状態を診て、シートに書き、養生して、洗って、脱脂して、磨いて、拭き上げて、隙間まで仕上げる。普段どおりの段取りでは、まず間に合いません。
実技で点を落とすのは、たいてい磨きの前と後です
監督官として見ていて、いちばん多いのがこれです。磨きの腕そのもので落ちる方は、実は多くありません。落ちるのは、その前後です。
協会が公表している1級の評価項目は、大きく3つに分かれています。施工前(使用機材や設備がプロらしいか、服装・髪型が清潔か、礼儀正しい対応ができているか)、施工中(お客様から見られて良い印象の作業か、作業後がキレイか、マスキングが適切か、施工時間に余裕があるか)、施工後(洗車傷が消えているか、オーロラ目が消えているか、バフ傷が少ないか、ムラがないか、鉄粉や異物が残っていないか、コンパウンドの洗い残しがないか、モール・レンズ・エンブレムの隙間、ドアやボンネットの隙間、ホイールとタイヤ、タイヤハウス、窓ガラスの内外、内装、そして完成検査中の受け答え)。
数えてみてください。「磨きそのもの」の項目は、全体のごく一部です。
洗い残し、隙間、拭き上げ、道具の置き方、受け答え。日常の仕事では「あとで直せる」ことが、試験では戻れません。時間切れで最後の拭き上げが雑になった一台は、磨きがどれだけ良くても点が伸びません。
評価項目の出典:日本コーティング協会「第5回 1級 試験開催日程」合否判定について(2026年9月1日確認)
一発で終わるNGが、はっきり決まっています
協会は1級試験について、減点・失格相当となる行為を明示しています。
クリア捻じれ(局所的な過研磨による肌乱れ・光学的ゆがみ)
エッジの剥離(塗膜焼き・削り抜き)
機材が車両へ転倒(ポリッシャーやボトルの地面接触)
ポリッシャーにコードを絡ませたままの稼働(危険行為・面圧が不安定になる)
車を凹ませた(過度な体重荷重・工具接触などの物理的損傷)
出典:日本コーティング協会「第5回 1級 試験開催日程」NG(減点・失格相当)ポイント(2026年9月1日確認)
上の2つは、どちらも「削りすぎ」です。焦って番手を上げる、同じ場所に留まる、面圧が抜けない。試験の緊張と時間の圧力は、普段は出ない癖をそのまま表に出します。だから対策は「本番で気をつける」ではなく、削りすぎない工程をあらかじめ組んでおくことにしかなりません。
受かる磨きは、練習量ではなく工程で決まります
「もっと練習すれば受かる」と考えて、同じやり方の回数だけ増やしてしまう方がとても多いです。ところが工程が3つ必要な組み立てのままでは、時間はどうやっても足りません。削る量を増やして帳尻を合わせにいくと、今度は上のNGに近づきます。
当店の講習で最初にやるのは、道具を増やすことでも回数を増やすことでもなく、いまの工程を数値で見て、減らせるところを決めることです。ポリッシャー・バフ・コンパウンドの組み合わせを必要最小限まで絞れると、1台あたりの工程が減り、1工程あたりの時間も短くなります。試験のように時間が決まっている場では、この差がそのまま出ます。
教えているのは、検定で「採点する側」の監督官です。
講師の渡邊 晃は、一般社団法人 日本コーティング協会の教務SGM技能監督官です。SGM=スクラッチシールド・グランドマスター。協会の最上級の指導資格で、協会の名において新しい会員を教育できる立場です。
2015年の第1回1級試験(ポートメッセ名古屋)以降、下関・香港・台湾でも試験監督官を務め、2024年10月の第3回1級試験は当店エコスタイル熊本が会場となりました。受験する側ではなく、合否を判定する側から見て、どこがどう見られるのかをお伝えします。
※当店は日本コーティング協会の会員であり、講習は当店が独自に実施するものです。受講が合格を保証するものではなく、協会が当店の講習を認定・推奨するものでもありません。検定の合否判定は協会が行います。
2級の実技までなら、標準コースの範囲です
STEP 1 いまの自分が何点かを、先に知る
ご自身の磨いた面を測色計で数値化します。参加条件は特にありません。「受かりそうかどうか」を感覚で悩んでいる時間がいちばんもったいないので、先に数字を見てしまうのが早いです。
熊本・名古屋のほか、出張での開催にも対応します。月2回・土日も調整できます。
STEP 2 工程を、組み直す
標準コース(3日間・税込660,000円)/TopProコース(4日間〜・税込990,000円)
標準コースには、基本座学とJCA2級試験の合格レベルまでのシングルポリッシャー講習が含まれます。輸入車や自己修復クリヤを日常的に扱う方はTopProコースが土台になります。いずれも弊社基準の達成まで延長は無料です。
検証会にご参加済みの場合は参加費110,000円を差し引き、標準コース550,000円/TopProコース880,000円になります。2名で受講される場合、2人目は標準コース330,000円/TopProコース550,000円(いずれも税込)です。
STEP 3 受験は、協会へ申し込む
日程・受験料・お申し込みは協会の窓口です。当店は受付を代行していません。
数値で示せることが、検定のあとに効いてきます
検定に受かること自体が目的になってしまうと、もったいないと感じています。合格証は、お客様には見えても、その磨きが具体的にどれだけ良くなったのかまでは伝えません。
施工写真は、光の当て方でも撮り方でも変わります。ところが数値は変わりません。当店の講習で扱っているのは、研磨の仕上がりを測色計で数値化する評価方式です。「なんとなく綺麗になりました」を、施工前と施工後の数字で示せるようにします。検定で身につけた基準を、日々の一台一台で使える形にするのがここです。
受講された方から、こう聞いています
いずれも受講店から繰り返し伺っている内容で、当店の実施記録による自社調べです。同じ結果をお約束するものではありません。
3工程が、1〜2工程で終わるようになった。仕上がりの数値はむしろ上がっています。
1工程あたりの時間も、短くなった。時間が決まっている試験では、そのまま効きます。
ポリッシャー・バフ・コンパウンドの組み合わせを、必要最小限まで絞れた。持ち込む道具が減ります。
予算に応じた工程の組み立てが、明確になった。「この予算ならここまで」を数値で説明できます。
新人が、最短1週間ほどで戦力になった。2級を受けさせる段階に来たときに効きます。
迷いが消えて、説明に説得力が出た。結果として成約率が上がったと伺っています。
よくあるご質問
この検定は国家資格ですか。
いいえ。一般社団法人 日本コーティング協会が実施する民間の技能検定です。国家資格ではありません。ただし1級では協会が定めた判定項目を5段階で評価し、約80%以上の得点を合格ラインとするなど、客観性のある基準として運用されています。
いきなり1級を受けられますか。
受けられません。1級の受験資格は2級取得者で実務経験3年以上(在籍証明書が必要)です。まず3級・2級からになります。
2級の実技には、何を持っていけばいいですか。
協会の案内では、磨き道具一式(ポリッシャー・バフ・コンパウンド・延長コード・ライト・ウエス・バケツ)に加えて、マスク・ゴーグルが挙げられています。普段ご自身が使っている道具で構いません。最新の持ち物は必ず協会の公式案内でご確認ください。
受験の申し込みは、こちらでできますか。
できません。申し込みは協会の窓口です。当店は受付の代行をしていません。日程・受験料も協会公式が正になります。当店でお受けしているのは、受験に向けた技術面のご相談と講習です。
講習を受ければ、合格しますか。
合格をお約束することはできません。合否を判定するのは協会です。当店がお手伝いできるのは、いまの工程を数値で見直し、時間内に収まる組み立てに直すところまでです。
まったくの未経験ですが、受講できますか。
受講できます。未経験の方は弊社基準を達成するまで日数を延長し、追加費用はいただきません。測色計は当店のものを使いますので、受講のために事前に購入していただく必要もありません。
遠方ですが、通えません。
検証会・講習ともに出張での開催に対応しています。その場合は交通費・宿泊費の実費をご負担いただきます。
キャンセルはできますか。
キャンセル料はいただきません。事務手数料3,300円(税込)を差し引いてご返金します。日程の変更もご相談ください。※出張で交通費・宿泊費を手配済みの場合は、その実費のみ申し受けます。
まず、困っていることを聞かせてください
「2級の実技で時間が足りない」「バフ目が最後まで残る」「何級から受けるべきか分からない」――そのままの言葉で構いません。監督官本人がやり取りします。「技能検定の件」の一行でも受け付けます。
伺えると、その場で組み立て方をご提案できます ―― 受験を考えている級/扱う車種の構成(国産中心/輸入車あり)/いま一番時間がかかっている作業。思いつくものだけで結構です。
24時間送信可(返信は営業時間内)。写真を送っての相談もできます。
平日10:00〜19:00/土9:00〜19:00/日祝9:00〜17:00
講習会場:車のお手入れ専門店 エコスタイル熊本(運営:株式会社 and CLEA)/〒861-8034 熊本県熊本市東区八反田1丁目3-78。出張での開催にも対応します。
次に読むページ
講習で何を扱い、誰が教えているのか。全体像はこちらにまとめています。
2級の実技で持ち込む道具を絞るための考え方です。工程を減らす話はこちらに書いています。
当店が受験する側だった日の記録と、2024年に試験会場を務めるまでの経緯です。
プロ向け研磨講習の全体像 | 研磨検証会 | 標準コース(3日間) | TopProコース(4日間〜) | カーコーティングで起業する方へ
講習の理論的な土台は、ケヰテック株式会社・金子幸嗣代表(日本コーティング協会 技術顧問)が月刊BSR誌に2017年から連載した内容をまとめた書籍『塗膜研磨の科学的アプローチ ― 磨き作業の哲学的思考』(プロトリオス/2022年9月/ISBN 978-4-9907550-4-1)です。書店で入手でき、どなたでも内容を確認できます。
測色計を用いた評価方式について
この評価方式は日本コーティング協会が、月刊BSRに連載された、「研磨した塗面のツヤを測色する」(ケヰテック株式会社金子代表投稿)の内容に基づき、金子代表立会いのもとご協力いただき、更に工夫を重ね出来上がった評価方式になります。
日本コーティング協会は、お客様にワンランク上のコーティング・サービスを提供するとともに、優れたコーティング技術の存在を一般に広く知らしめることで、お客様の満足度向上と業界のボトムアップを図ることが目的で活動しております、従いまして、興味がある方は、必ず当協会にお声をお掛けください。
評価方法のみを真似ることではなく、なぜ、ツヤが測色できるのか?、ツヤの色による数値化が必要なのか?、それの根拠、他の方法との比較や優劣、注意点など、を丁寧に説明して、話し合うことが出来ます。
※当店は一般社団法人 日本コーティング協会の会員です。本ページは当店が実施する講習のご案内であり、協会が個別の店舗や事業者の優劣を認定・推奨するものではありません。検定の実施・合否判定は協会が行います。
