【同業者向け】バフとコンパウンドの組み合わせを測色計で比べた検証|ルペスとケヰテック、1〜3工程の結果
「ウールで2回、ウレタンで1回。3工程かけたのに、思ったほど仕上がらない」「どのバフとコンパウンドを組み合わせれば、短い時間で狙った仕上がりに届くのか」——研磨をされるプロの方なら、一度は迷ったことがあるのではないでしょうか。
この記事は、2021年8月26日に、WDJ(ワールドディテイリングジャパン)と日本コーティング協会(JCA)が共同で行った研磨の検証会の後編です。トヨタ プリウスの202ブラック(実車)を、ルペスとケヰテックのポリッシャーで、バフとコンパウンドの組み合わせと工程の数を変えて磨き、研磨の前と後を測色計で測りました。実際に測った数値を、公開できる範囲でお伝えします。検証会の目的と研磨前の塗膜の状態は、前編にまとめています。
一般のお客様へ:ご自分の車の磨き傷や、磨いたあとに出る虹色の渦が気になる方は「オーロラマーク・バフ目の消し方」を、研磨をお店に任せたい方は「外装研磨・車磨き」をご覧ください。この記事は、施工店・研磨をするプロの方に向けた内容です。
この記事の要点
- 研磨前の数値は、どの組み合わせも平均L*4.38。研磨前の数値より小さいほど、良い結果の数値です。
- ルペスでは、3工程(研磨後 平均L*1.22)より、2工程(1.18)のほうが小さい数値でした(3工程は800番の傷を付けてから始めており、スタートの条件が違います)。1工程目のウールバフとコンパウンドの相性が合わず、傷の置き換えが正しくできていなかったと見ています。
- ケヰテックの3工程(1工程目にシングルポリッシャーの MaiⅡ)は0.92。比べた6通りの中で、ほかの5通り(1.08〜1.28)より小さい数値でした。
- 1工程でも、研磨力がありながら、残ったバフ目が比較的浅い組み合わせがありました(ルペス 1.28/ケヰテック 1.22)。
- 同じポリッシャー・バフ・コンパウンドを使っても、数値は上下することがあります。コンパウンドの特性、ポリッシャーの回転数や動かし方、バフにかける面圧の調整で変わるためです。
自店の組み合わせを、条件をそろえて数値で確かめたい方へ。研磨検証会(半日・税込110,000円・参加条件なし)を開いています。

検証の条件——何を、どう比べたか
この検証会の目的は、ポリッシャーやバフの良し悪しを決めることではありません。お店ごとに違うコーティングの料金や作業時間を前提に、どの組み合わせで磨けば、目標とする仕上がりに短い時間で効率よく届くのかを確かめることです。
- 車両:トヨタ プリウスの202ブラック(実車)。国産車の、比較的やわらかいとされる塗膜です。
- 塗膜の状態:水シミや線傷が深く、数も多い状態でした。
- ポリッシャー:プロの使い手が多いルペスとケヰテック。ルペスは RUPES のオービット12、ケヰテックは MaiⅡ(シングルポリッシャー)と ToiZ を使いました。
- 工程の条件:3工程は、いまの塗膜に800番の傷をあえて付け、それを消してから仕上げました。1工程と2工程は、いまの塗膜の状態から仕上げました。
- 測ったもの:研磨のあとに残ったバフ目(研磨傷)を、測色計でくり返し測りました。この記事の数値は、研磨前と研磨後の L* の平均です。
- 商品名:バフやコンパウンドの名前は、事前に公開の許可をいただいたものだけを載せています。
同じポリッシャー・バフ・コンパウンドを使っても、この結果より数値が上下することがあります。研磨理論にもとづいて、コンパウンドの特性や、ポリッシャーの回転数・動かし方、バフにかける面圧などを調整する必要があるためです。まずは、機材選びで迷う時間を減らし、お店に合った組み合わせを試すときの手がかりにしてください。
バフとコンパウンドの組み合わせ6通りと、研磨後の数値
研磨前の数値は、どの組み合わせも同じ平均L*4.38です。研磨前の数値より小さいほど、良い結果の数値となります。
| ポリッシャー | 工程 | バフとコンパウンド(工程の順) | 研磨後(平均L*) |
|---|---|---|---|
| ルペス(オービット12) | 3工程 | ①ウールバフ → ②ウールバフ → ③ウレタンバフ | 1.22 |
| ルペス(オービット12) | 2工程 | ①ウールバフ → ②ウレタンバフ | 1.18 |
| ルペス(オービット12) | 1工程 | ノースウルフ(紫)+贅沢コンパウンド ONE STEP | 1.28 |
| ケヰテック(MaiⅡ・ToiZ) | 3工程 | ①シルキーメイン+ブラック(MaiⅡ)→ ②シフォン+ブラック(ToiZ)→ ③ディンプリング+ウェット(ToiZ) | 0.92 |
| ケヰテック(ToiZ) | 2工程 | ①シフォン+ブラック(ToiZ)→ ②ディンプリング+ウェット(ToiZ) | 1.08 |
| ケヰテック(ToiZ) | 1工程 | シフォン+ブラック(ToiZ) | 1.22 |
※ 研磨前は、どの組み合わせも平均L*4.38。研磨前の数値より小さいほど、良い結果の数値です。
※ ケヰテックの欄は「バフ+コンパウンド(ポリッシャー)」の順です。ルペスの3工程・2工程は、コンパウンドの名前を載せていません。
※ 3工程は800番の傷を付けてから始めているため、1工程・2工程とはスタートの条件が違います。
ルペス(オービット12):3工程より、2工程のほうが小さい数値でした
3工程(ウールバフ → ウールバフ → ウレタンバフ)
研磨前:平均L*4.38 → 研磨後:平均L*1.22
この結果は、1工程目のウールバフとコンパウンドの相性が合わず、正しく傷の置き換えができていなかったと見ています。
2工程(ウールバフ → ウレタンバフ)
研磨前:平均L*4.38 → 研磨後:平均L*1.18
2工程でありながら、3工程より小さい数値が出ました(ただし、3工程とはスタートの条件が違います)。
1工程(ノースウルフ(紫)+贅沢コンパウンド ONE STEP)
研磨前:平均L*4.38 → 研磨後:平均L*1.28
研磨力がありながら、残ったバフ目も比較的浅いと言える結果でした。この組み合わせは、1工程の研磨で安定した数値が出ていました。贅沢コンパウンド ONE STEP は KYOTO DETAIL の商品です。検証は2021年に行ったものなので、商品の中身や仕様が変わっている場合もあります。使う前にメーカーの案内をご確認ください。
検証会では、このあと2工程目で仕上げる組み立ても、1工程のあとにポリマーで埋めて整える組み立ても、ありではないかと感じました。ただ、ポリマーやコンパウンドの油分で埋まったバフ目は、洗車や時間の経過で、また見えてくることがあります(「オーロラマーク・バフ目の消し方」)。
ケヰテック(MaiⅡ・ToiZ):3工程は、比べた6通りの中でほかより小さい数値でした
3工程(シルキーメイン+ブラック → シフォン+ブラック → ディンプリング+ウェット)
- 1工程目:バフ シルキーメイン/コンパウンド ブラック/ポリッシャー MaiⅡ
- 2工程目:バフ シフォン/コンパウンド ブラック/ポリッシャー ToiZ
- 3工程目:バフ ディンプリング/コンパウンド ウェット/ポリッシャー ToiZ
研磨前:平均L*4.38 → 研磨後:平均L*0.92
1工程目にシングルポリッシャーの MaiⅡ を使ったこともあり、比べた6通りの中で、ほかの5通りより小さい数値が出ました。
2工程(シフォン+ブラック → ディンプリング+ウェット)
研磨前:平均L*4.38 → 研磨後:平均L*1.08
どちらの工程も ToiZ で磨いています。
1工程(シフォン+ブラック)
研磨前:平均L*4.38 → 研磨後:平均L*1.22
研磨力がありながら、残ったバフ目も比較的浅いと言える結果でした。この組み合わせも、1工程の研磨で安定した数値が出ていました。
※ ケヰテック(ケイテック)のポリッシャー名は、メーカーの表記(MaiⅡ・ToiZ)に合わせました。以前のこの記事では「MayⅡ」「ToyZ」と書いていました。
この検証で分かった3つのこと
- 研磨は、深い傷を浅い傷に置き換える作業です。最初の1工程目の組み合わせを間違えると(この検証で確かめました)、ルペスでもケヰテックでも、少ない工程数で高い水準の仕上がりを出すのは難しくなります。
- 工程を増やせば、数値が良くなるとは限りません。ルペスでは、3工程より2工程のほうが小さい数値でした(スタートの条件の違いはあります)。
- 仕上げの研磨を重ねても、組み合わせによってはバフ目が増えることがあります。最終研磨まで終えた塗膜に、仕上げだけの研磨を重ねる検証を多く行いましたが、ポリッシャー・バフ・コンパウンドの組み合わせによっては、バフ目を増やし、艶を損なう結果もありました。
今回の202ブラックは、水シミや線傷が深く多い、ふだんなかなか見ない状態の塗膜でした。だからこそ、あらためて確かめられたことでもあります。検証の数は、まだ多くありません。
自店の組み合わせに置き換えるときは
この記事の数値は、2021年8月に、国産車の比較的やわらかいとされる塗膜で測った結果です。そのまま自店の正解として使うのではなく、自店の組み合わせを見直すときの手がかりとしてお使いください。当店が工程を組み立てるときに大事にしていることを、4つ挙げます。
- 塗装の硬さを先に見る——国産車の新車の塗膜はやわらかく、国産の補修塗膜、自己修復タイプ、外資系の補修塗膜、輸入車の新車の塗膜の順に硬くなっていきます。硬さが違えば、番手もコンパウンドもバフも回転数も変わります。
- 1工程目を決めてから、残りを組み立てる——1工程目で深い傷を浅い傷へ置き換えられていないと、あとの工程では消えきりません。工程ごとに、置き換わったのを確かめてから次へ進みます。
- 工程を減らすときは、1か所ずつ比べる——ポリッシャー・バフ・コンパウンドを同時に変えると、何が効いたのか分からなくなります。同じ塗膜・同じ条件で比べ、差が出なかった工程を外します。確かめる順番は「ポリッシャー3種とバフの使い分け」にまとめています。
- 仕上がりは、油分を取ってから確かめる——コンパウンドやポリマーの油分は、消し残したバフ目を一時的に埋めてしまいます。油分を拭き取ってから、強い光を当てて確かめます。
研磨は、塗装の表面にある透明な層(クリヤー)を削る作業で、削ったぶんは元に戻りません。組み合わせを比べるための試し磨きも、同じ所で何度も重ねないようにします。1工程で止めるか、2工程目で仕上げるかは、お客様の予算と作業時間、求める仕上がりで決めます。
よくあるご質問
Q.工程は多いほど、仕上がりは良くなりますか?
A.この検証では、そうとは限りませんでした。ルペスでは、3工程(研磨後 平均L*1.22)より2工程(1.18)のほうが小さい数値でした。1工程目の組み合わせが合っていないと、工程を重ねても傷の置き換えが進まないことがあります。なお、3工程は800番の傷を付けてから始めているので、1工程・2工程とは条件が違います。
Q.この記事と同じ組み合わせを使えば、同じ数値になりますか?
A.なるとは限りません。研磨理論にもとづいて、コンパウンドの特性や、ポリッシャーの回転数・動かし方、バフにかける面圧などを調整する必要があるためです。塗装の種類や状態によっても変わります。
Q.1工程だけで仕上げてもよいのですか?
A.お客様の予算と作業時間、求める仕上がりで決めることです。この検証では、1工程でも、研磨力がありながら残ったバフ目が比較的浅い組み合わせがありました(ルペスとケヰテックで1通りずつ)。1工程で止めるときも、油分を拭き取ってから仕上がりを確かめてください。
Q.輸入車や、自己修復タイプの硬い塗装でも同じ結果になりますか?
A.この検証は、国産車の比較的やわらかいとされる塗膜(プリウスの202ブラック)で行いました。塗装が硬くなれば、番手もコンパウンドもバフも回転数も変わります。輸入車や自己修復塗装の工程は、TopProコース(4日間〜)で扱っています。
Q.測色計での測り方を教えてもらえますか?
A.測り方の手順は、この記事には書いていません。この評価方式は、日本コーティング協会が、ケヰテック株式会社 金子社長のご協力のもと確立したものです(記事の最後の「測色計を用いた評価方式について」をご覧ください)。ご自身の磨きを測ってみたい方は、研磨検証会で、条件をそろえて数値にして確かめられます。
Q.記事に載っていないバフやコンパウンドの名前も知りたいのですが。
A.記事に載っていない商品名は、日本コーティング協会のお問い合わせフォームからお問い合わせいただければ、お伝えします(お電話では受け付けていません)。
Q.自店のポリッシャーやコンパウンドで測ることはできますか?
A.研磨検証会に、普段お使いの道具を持ち込みたい場合はご相談ください。普段の道具で臨まれたほうが、結果を店に持ち帰りやすくなります。ただし、検証は条件をそろえることが前提のため、そろえる部分と自由な部分の線引きは事前にご案内します。
自店の組み合わせを、条件をそろえて数値で確かめる
この記事の数値は、2021年8月の、この車・この塗膜での結果です。自店で使っている組み合わせがいまどこにあるのかは、ご自身の手と道具で測ってみないと分かりません。
エコスタイル熊本では、研磨検証会(半日・税込110,000円・参加条件なし)を開いています。熊本・名古屋のほか出張での開催もでき、月2回、土日も含めて日程を調整できます(出張の場合は、参加費に加えて交通費・旅費の実費をご負担いただきます)。
工程の組み立てから見直したい方には、日本コーティング協会の指導資格「教務SGM技能監督官」を持つ講師が直接指導するプロ向け研磨講習(標準コース・3日間・税込660,000円/TopProコース・4日間〜・税込990,000円)もあります。検証会のあと講習に進まれる場合は、受講料から110,000円を差し引きます。
「この組み合わせで、本当にいいのか」を、自店の道具で確かめたい方へ。研磨検証会・講習のご相談は、フォームからどうぞ。
目的別:次に読む記事
検証会の目的と、研磨前の塗膜の状態を知りたい方
▶ 前編:WDJとJCAによる共同検証会(研磨前の塗膜の状態)
ポリッシャーとバフの使い分けを知りたい方
▶ ポリッシャー3種とバフの使い分け|コンパウンドとの組み合わせ方
磨いたのにオーロラマーク・バフ目が残る方
光沢計の数字で仕上がりを見ている方
▶ 光沢計の数字だけで研磨の仕上がりを評価できない3つの理由
研磨の講習を考えている方
一般のお客様
この記事について
- 2021年9月3日に公開した記事を、2026年10月に書き直しました。検証の数値と内容は、2021年8月26日の検証会のものです。
- 検証の協力:WDJ(ワールドディテイリングジャパン)/一般社団法人 日本コーティング協会(JCA)
- 協力会社:しゃかりき(株式会社BestOne)/エコスタイル熊本(株式会社 and CLEA)
車のお手入れ専門店 エコスタイル熊本(運営:株式会社 and CLEA)
〒861-8034 熊本県熊本市東区八反田1丁目3-78
TEL:096-223-5536/公式LINE/お問い合わせフォーム
測色計を用いた評価方式について
この評価方式は日本コーティング協会が、月刊BSRに連載された、「研磨した塗面のツヤを測色する」(ケヰテック株式会社金子代表投稿)の内容に基づき、金子代表立会いのもとご協力いただき、更に工夫を重ね出来上がった評価方式になります。
日本コーティング協会は、お客様にワンランク上のコーティング・サービスを提供するとともに、優れたコーティング技術の存在を一般に広く知らしめることで、お客様の満足度向上と業界のボトムアップを図ることが目的で活動しております、
従いまして、興味がある方は、必ず当協会にお声をお掛けください。
評価方法のみを真似ることではなく、なぜ、ツヤが測色できるのか?、ツヤの色による数値化が必要なのか?、それの根拠、他の方法との比較や優劣、注意点など、を丁寧に説明して、話し合うことが出来ます。

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